「流動型『学び合い』の授業づくり」は試行錯誤の足跡

教育

僕はどちらかというと,これまでの教育にフィットしてきた方だと思います。というか,教員のほとんどが,そうではないでしょうか。でも,新学習指導要領が4月から実施されます。どう自分の授業を変えていけばいいか分からない,もしくは,新規採用されて授業について考えたい,という人にぜひ読んでほしいです。

ワイワイ
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ちょっと自分の思いも入りすぎているので,興味のないところは読み飛ばしてください!

「脱工業化」が叫ばれています。今の学校制度は、工業化社会の考え方をベースに作られていると言われています。

どうして「工業化」なのでしょう。

① 学校指導要領によって学ぶべき内容は規格化されている。
②授業は分業化されている。
③時間割によって学校全体のスケジュールが決められていて、同時化されている。
④学校は文部科学省や都道府県教育委員会による中央集権で統制されている。
 

このようにポイントごとに見ていくと,工場で働いている人と同じように学ぶ子どもたちの姿が想像できます。

これまでは,これでよかったのですが,今の時代にはマッチしなくなっているように感じます。 なぜなら,工業生産のほとんどの作業が機械やコンピュータに取って代わられ始めているのですからです。そこで「脱工業化」というわけです。コンピュータやAIができないことを生み出していく人材を育てなくてはなりません。社会や求められている人物像が変化しているのに,これまでのいわゆる「一斉授業」だけで教育していくことには,限界があるのではないでしょうか。みんなが多様性を認め合い,コラボレーション(ここに関しては,「6CS」という考え方があるのですが,こちらに関しては,後日,紹介したいと思います。)することのできる時間を学校で創出していく必要がある,と僕は思います。

ただ,この考えは,僕の中でずっとありました。十数年前,採用される前に『学び合い』(上越教育大学の西川純教授が提唱)を知りました。インターネットで申し込みをして,勉強会にも参加しました。初めての勉強会,自分は先生でもないのに,とドキドキしていました。でも,みんなで意見を出し合っている大人たちの姿も見て「格好良いなぁ!」と思っていました。

「未来の子どもたちのために,できることをしたい!」

自分が受けてきた教育と,ずっと変わらぬ学校現場に危機感をもち,新規採用1年目から『学び合い』に挑戦しました。結果,見事に玉砕しました。その時の保護者には「新しいことなんていらないから,みんな(他の先生)と同じように(一斉授業)して!」と言われました。僕は何も言い返せませんでした。

それから時は流れ,『学び合い』の本もたくさん出版されるようになり,「アクティブ・ラーニング」という言葉が出だした頃から,認知度が高まってきたように感じます。僕自身は『学び合い』には再挑戦できず,佐藤学さんの提唱する「学びの共同体」を学びました。学びの共同体は,あくまで教員が主役な気がしました。教師は高度な専門性をもち,授業をコントロールするというイメージをもったからです。

その後,「キャリア教育」,「ホワイトボードミーティング」,「言語活動」,「パフォーマンス評価」,そして,今は「作家の時間」「読書家の時間」などのワークショップ型の学習に興味をもち,学んでいます。

ワイワイ
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話が逸れてしまった。話を戻します!

著者である高橋先生の存在を知ったのは,岩瀬直樹がブログか何かで紹介されていたからだと記憶しています。僕は,初任の頃から岩瀬先生のブログを読み(子ども時代,近くに住んでいたことがあるという記述を見つけたこともあり,勝手に親近感),本も読み,実践も追いかけてきました。だから,「『学び合い』の先生が,岩瀬先生に認められている!」と少しうれしい気持ちでもありました。

今年になり,その高橋先生の「流動型『学び合い』の授業づくり」が出版されるということを知り,買うことを決めたのでした。

この本の中で,自分の心に残った部分を記録しておきたいと思います。

本の中で,坂内さんから教えてもらったという「学びが雪のように降り積もる」という表現と高橋先生の解釈がすてきだと思いました。「学び」って一瞬でできあがるものじゃないですよね。そして,何もしなければ溶けてしまうってイメージもよく分かります。毎日,毎日,地道にやってきたことが,少しずつ子どもたちのものになっていく。

でも,僕はそれを忘れがちで,「この前言ったとこでしょ!?」なんて子どもに言ってしまうこともあります。でも,やっぱり,子どもの中には少しずつ積もっていくのです。焦らず何度も積み重ねていくことを意識していきたいと,改めて思いました。

じゃあ,そのためにできることは何かということを高橋先生は考えました。そこで,生まれた実践が,繰り返し学ぶために,型を決めて進めていき,その型で学習を何度も繰り返していくうちに,だんだんとできるように,と学びを回すことです。ここで大事なことは,3回繰り返して書くことができる子もいれば,1回しか書けない子がいてもいい,という点です。すべての子に3回書くことを課してしまうと,お互いがしんどくなってしまいます。何度も書くチャンスがあるのだから,少しずつできることを増やしていけるようにアドバイスをしていくのです。「できない。」でなく「これができるようになった。」とプラスで捉えられるといいですよね。何回もチャンスがあるからこその学び方です。

ただし,繰り返してばかりだと,子どもたちは安心して学べますが,飽きてきます。そこで,「変化」を加えるというのです。「もっと詳しく…」「もっと工夫して…」など,その子のさらに頑張れそうなことを見極めて,求める。同じ子ばかりでなく,すべての子に順番に。

これが発展して,「カリキュラム・マネジメント」につながっている。国語科で説明文の学習を学んだら,それを生かして理科の実験を説明する,のように教科を横断して学んでいく。(こちらに関しては「子どもの書く力が飛躍的に伸びる! 学びのカリキュラム・マネジメント」に詳しく書かれています。)

と,ここまで書いてきて,「このように書き進めると,ピックアップした部分が多すぎて,なかなか終わりそうにない!」ことに気付いてしまった。あぁ,どうしよう。

※zoomを使って「8分間読書法」というものに仲間と挑戦しました。
その時に気付いたことはこちらです。

この本は,高橋先生の葛藤や試行錯誤に「そうそう!」と共感しながら,どんどん読み進めることができました。自分が進んできている道とも,重なっていて,「この道で合っている!」と背中を押してもらった気持ちになりました。

僕が失敗した理由は,「助け合い型『学び合い』をしていたからなのだろうなぁ。」とこの本を読んで気付けました。「助け合うこと」が目的になってしまっていたのですね。強制してしまいました。「一人も見捨てないこと」が目的で,そのために「助け合う」という手段を用いるはずなのに。

子供たちの力を信じて始めた『学び合いのはずなのに,気がつくと私は子供たちを信頼できず,急かし続けている。この矛盾した状況は私自身も楽しくありませんでしたし,それ以上に子供たちが辛かったでしょう。

                               高橋尚幸 「流動型『学び合い』の授業づくり」より引用

まさに,です。子どもたちが辛くなり,その思いを親に話し,親としては不安が掻き立てられ,最初に書いたように「新しいことなんていらないから,みんな(他の先生)と同じように(一斉授業)して!」という言葉が出てしまったのでしょう。

ただ,その時の自分は,「どうして僕の思いを分かってくれないんだ!?」「こんなにいろいろと考えているのに。みんなと同じでいいってどういうこと?頑張ったら損だ。」なんて考えていました。他人のせいにしていても何も変わらないけど,気持ちがついていかなかったのです。また,自分を振り返る余裕もありませんでした。

教員としてやっていくには,試行錯誤を重ねていく必要があります。時には,振り返ることは,時には痛みを伴います。でも,自分と向き合わない限り,成長していくことは難しいです。

ある時,水族館のイルカのトレーナーさんに話を聞く機会がありました。

私は,どうすればイルカが楽しくショー(技)をしてくれるか考えています。前にできたことが,次の日にできないことも多々あります。でも,叱っても彼らはできるようになりません。どうすればイルカが楽しんでできるか,毎日,試行錯誤の連続です。

                                    水族館のイルカのトレーナーさんの言葉より

このように話してくれました。どの職種でも同じですね。他人を変えることはできなくても,自分を変えることは自分でできます。ただ,試行錯誤していることは,記録に残していかないと消えていきます。その時には分からなくても,記録を後で見返すと見えてくることもあるでしょう。(反対に記録がないと,何となく感情だけが残りがちです。)

この本では,高橋先生の試行錯誤の足跡を読み,考えることは多くの教員の経験値につながるはずです。ぜひ,読んでみてください。ただし,これは高橋先生の話であり,もちろん同じようにはいきません。そのことを踏まえた上で自分の中に落とし込まないといけません。でないと,以前の自分のように,「なんでこんなに勉強しているのに!」「この本にはこんな風に書いているのに!」と他人のせいにしてしまいがちですからね。僕も気をつけていきたいです。

ワイワイ
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書いていて「自分の思い」があふれ出てしまったなぁ。それも書いてみて初めて気付くこと。アウトプットの難しさが分かりました。

最後まで読んでくださって,ありがとうございました!

コメント

  1. […] […]